Prologue

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「うわぁ~どないしょ~!日本有数の大企業の御曹司と婚約してるのに、ギリシャの若き大富豪とアラブの王族の皇太子とヨーロッパの小国のプリンスからもプロポーズされてしもた~!!」 興戸がマロンブラウンのくるんくるんの巻き髪を揺らして、いや~ん、と悶えている。 「あぁ……うちのために、争わんといてぇ。源義経はんと織田信長はんと坂本龍馬はんから一人選べやなんて、うち、できひんわぁ……うわぁっ、ナポレオンはんまで、うちを奪いに来はったえ~!」 七条が腰まである緑の黒髪をつやりと光らせ、よよっ、とデスクに崩れた。 「証拠はしっかり押さえとうで。あとは追い込みかけるだけや。なんで女房子どもがおるくせに、婚活パーティなんかに来ようねん?アンタの女房にもぜぇんぶバラして、息の根止めたるからな……ウソつき詐欺野郎、覚悟しいや」 鳴尾が漆黒の前下がりボブをかきあげて、にやり、と氷の微笑を浮かべる。 社内のPCを使って三人がとてつもない集中力でやっているのは、仕事ではなく「乙ゲー」だった。無課金でお得にゲームでき、あわよくば特典ゲットできる、二十四時間限定の「フィーバー祭り」が始まったのだ。 ちなみに、彼女たちが会社の契約しているプロバイダのインターネットで乙ゲーをしているのは、内規によりオフィスでの私物のスマホは使用禁止だからである。 だからといって、会社のインターネットを無断私用するのは、内規に書いてなくても、常識的にやってはならないことなのだが。 ……この人ら、こんなに美人やのに。 リア充と(ちゃ)うねんなぁ。 北浜にある大阪支店の営業部に、彼氏がいる豊川はそう思った。
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