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もっと良いところへ行けると、複数人の教授に推薦されたことはまだ記憶に新しい。
特別人より高い地位に、興味がなかっただけだ。生きていけるだけの糧が得られれば、それで充分だった。
だから私が生涯こんなにも執着したのは彼女だけだった。いい意味でも、悪い意味でも。
きっかけはなんだったろうか。
ほんの些細な、一瞬の衝動。時間は夜だったか……彼女を押し倒してみた事があった。もちろん戯れだ。
夢を見始めたのは遊びでも……その内側は限りなくリアルで生々しいものだった。
これは過去の女性には失礼かもしれないが、誰よりも美しく素敵だった。まるで天使のように。
拒絶されたのならば、踏みとどまれたのかもしれない。でも彼女はそうしなかった。
いつも……だんだんと見慣れ始めていた笑顔のままだった。あぁ、前にも誰かとそんな事があったのだろうか?
そうして私は彼女に溺れていった。
幾度か肌を重ねても、重ねるほど深く溺れていき、得体の知れない想いだけが残った。
可憐な少女であるが、例えるならば狭間だろうか。成熟しかけた過程の果実。無意識に色香を振りまいているような。
無邪気に楽しそうに何かを見ているときもあり、花を売る者のようにしなやかな動きで誘う時もある。
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