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あまりにも無防備なので、閉じ込めてしまいたいと思ったこともある。
日中、彼女はどこかにいっている。私の住んでいる街か、それ以外の知らぬ場所か。
夜になると私の家にひとりで戻ってくるから、さほど気にしてはいない。
必ず帰ってきてくれる、何故かそんな確信を抱いていたから、余計な心配はしていなかった。
だが、彼女が誰かの目に止まってしまったらと気が狂いそうになる時もあった。
普通の相手ならば強硬手段にでてしまえばいいのだろう。しかし彼女は手篭めにしても壊せない。
だから壊せたのではないかと錯覚するくらいに、乱してみたいと願うときもある。
それでも彼女は笑うのだろう――遊びそのものなのだから、彼女にとっては。
いつだって、そうだ。彼女は遊んでいる、それはもう無邪気に。
戯れにくちづけるとくすくすと笑みを零し――本気で掻き抱けば瞳に冷色が混じる。
私ひとりが、興じた遊びに本気になっているようで滑稽だ。
彼女が洩らす声に理性がブラックアウトしそうになる。かぼそい糸で繋ぎとめるのは戯れという認識。
遊びのつもりだったのに、気がついた溺れていた、本気になっていた。よくある話だとは思っていた。
まさか、他人に執着することのない私がそう想う日が来ようとは。
私は戯れではない愛が欲しい。
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