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私の言葉は、どうすれば貴女に届きますか?」
何度目かも忘れたくちづけのあとに重ねた言葉。
「言葉は届かない。あなたが人でいる限り」
どこか冷めた色で私を見ながら、告げられた言葉。
人で在り続けることなど、彼女といられる価値に比べれば塵のようなものなのに。
「いつか貴女は何処かへ行ってしまうだろう。最後まで、傍にいられるだろうか」
最後の瞬間が望めないのならば、貴女が止めをさしてくれたならいいのに。
「一人にしないでおくれ。いっそ共に死ねたなら」
「人を捨てるのは、許さない」
そんなことしたら嫌いになるわ、とわらう彼女。ひどい人だ。
私も人でなければよかったのに。貴女の片翼をもいで、この背に縫いつけてしまいたい。
飛べなくても構わない。彼女の傍にいられるのならば……
「永遠に夢を見ていたいのに、現実は止まれない。どうか忘れないで欲しい」
色褪せぬ姿が最後の夢となっても、消える瞬間には跡形もない。
貴女にとっての刹那でも、たしかに存在していたのだ。
私が。
異形の貴女を愛した人間が。
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