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俺は確実に死んでいた、と、俺を見付けた村人は言った。
夜中に娘が高い熱を出したので、診てはもらえないかと俺を呼びに来たのだそうだ。そこで首を吊っている俺を見付けたが、人を呼んで下に下ろすと、数分もしないうちに息を吹き返したのだという。
俺は困惑しながらも集まっていた村人たちに礼を言い、娘の様子を聞いて薬を選んで処方した。
そしてその夜、俺は荷物を纏めて、そのまま村を後にした。
もう、数百年は前の話だ。
俺はそれからも老いることなく、死ぬこともなかった。
大怪我をしたり毒を飲んだりすると痛くて苦しかったが、意識を失って目覚めると、何事もなかったかのように万全の体調で目覚める。
俺は、人の理から外れた、不老不死の人間らしかった。
死なずに長く生きるということは、決していいことではなかった。
不老不死であることを隠しながら、一か所に留まって生活をするのには限界があった。
それに、誰かと親しくなることも避けるようになった。
短命の友人だけでなく、長命の友人でさえ、俺を置いて先に逝ってしまう。心の穴は増えるばかりだ。
やがて、俺は旅をしながら暮らすようになった。
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