137人が本棚に入れています
本棚に追加
「アレン先生。……あなたは、死ぬことが怖くないのですか?」
俺は恐る恐る聞いた。
すると、先生は答えた。微笑みを浮かべたまま、穏やかな声音で、まるで何でもないことだとでも言うように。
「怖いよ。すごく怖い」
けれども、そう言った上で、先生はこう続けた。
「でもね、人はいつかは、みんな死ぬんだよ」
僕が意味を掴めずに首を傾げると、先生はさらに目元のしわを深くした。
「例えば、明日事故に遭うかもしれない。重たい病にかかるかもしれない。いつ何が起こるかなんて、想像するとキリがないだろう? ……短命だろうが長命だろうが、当たり前に来る明日なんてないんだ」
先生はそう言うと、まっすぐに俺の目を見た。
俺は聞いた。
「……先生でも、死を恐れて泣くことがあるんですか?」
「もちろん。僕も人だからね」
それを聞いた俺の目からは、言葉に応えるように涙が溢れていた。
先生は立ち上がって俺に近付き、そっと抱き締めてくれた。
やがて俺が泣き止むと、先生はもう一杯、ミルクティーを入れてくれた。
そして、向かいに腰かけて俺に聞いた。
「さて、リオ。君はどうしたい? 残りの人生を薬師として過ごすか、他の道を選ぶか。……今日が一つの選択の日だ」
最初のコメントを投稿しよう!