海月と金魚と夕焼けと

4/17
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
祖父はこの町で漁師をしていた。 父がまだ幼い頃に海の事故で亡くなったのだと、祖母から聞かされていたのをぼんやりとだが覚えている。 祖父の思い出が何一つない僕は、「そうなんだ」としか言わなかったし、そもそも『おじいちゃん』という存在自体に実感がないものだから、大して寂しいと感じた事はなかった。 ただその話を聞かされた時、女性らしさのないゴツゴツとした祖母の分厚い掌で、頭を撫でられた事は良く覚えている。 港町ではよくある話らしく、この辺の集落でも二割の家庭がそう言った事故で片親だった。 それなのに、なぜか町の皆んなはいつも笑っていた。まるで身内の死が誇らしい事でもあるかのように、平然と笑いながらその話をするのだ。 まるでそれが当たり前であるかのようにさえ思えて、気味が悪くて僕はその話を聞いた頃から、祖母の家には行かなくなっていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!