海月と金魚と夕焼けと

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「そしたらな、有難い事に料理上手な嫁さん貰ってな、可愛い子どもも生まれて、もう幸せの絶頂だった。泣き言なんて言ってらんねーって、漁師の仕事も必死こいてやった。稼がないといけねぇしな」 二度汽笛の吹鳴が聞こえ、僕は海の方に視線を向けた。沖の方で大きな船舶がゆっくりと旋回していた。 「でもな、おじさんの子どもは病気だったんだ」 「…… 何の?」 「心臓の作りが、他の人と違うんだとさ。難しい事は分かんねぇけど、とにかく長くは生きられないってさ、まだ生まれたばかりなのにお医者様が言うんだよ。まだ、生まれたばかりだぞ?」 無慈悲なもんだよ。と小島のおじさんはやっぱり笑いながら言った。 町の人と同じように、自分の子どもの事なのに、だ。
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