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「それで、どうなったの?」
「おじさんはな、探したんだ。とにかく生きられる方法はないかって、何とか治す方法はないかって」
「あったの?」
「あったんだ」
「凄いじゃん! どんな方法?」
「クラゲだよクラゲ」
豆鉄砲なんて食らった事はなかったけど、僕は驚いてそんな顔をしていたと思う。
「クラゲ?」
「ベニクラゲって知ってるか?」
僕は首を横に振る。
「ベニクラゲっていうな、小指の先くらいの小さいクラゲがいるんだよ。そいつがなんと、不老不死なんだ」
「ふ、不老不死!?」
まるでお伽話を聞いてるようで、現実味のない内容に首を傾げる。
「そうだ、死にかけても若返るんだとさ。だからお偉い人が研究を重ねて、その内人間にも応用できるようになるんだとよ」
まぁ息子の時には間に合わなかったけどさ、と小島のおじさんは遠くの沖を見ながら消えるような声で呟いた。
「笑っちまうだろ? あれだけ嫌われ者のクラゲがさ、いつか人間の寿命問題を解決するかも知れないんだぜ? いつか人間を救う救世主になるかも知れないんだぜ?」
そこで僕はようやく気付いた。
おじさんは子どもの話をしながら、笑っていたんじゃない。
「ほんと、笑っちゃうよな……」
町のみんなも、大切な家族を失って、笑っていたんじゃない。
「でもいつか、来るといいよな……」
小島のおじさんも、町のみんなも。
笑う事を諦めなかったんだ。
「そういう日が、来るといいよな」
生きる事に希望を捨てなかったんだ。
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