第四章.夏を往く

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 ダンは学校では誰にでも分け隔てなく接するタイプだったが、つい4カ月前には思わぬことから問題を起こしていた。  修学旅行のときだった。  教師達はダンのグループに自由を許さず、常に彼らを監視していた。  夕食時、どこのグループのテーブルも満員になってしまったせいで、ウロウロしているこの上なく地味な生徒がいたので、ダンはこの生徒に声をかけ、自分のとなりに座らせようとした。  が、その時突然担任の教師がやってきて、なんとダンの腿を蹴ってきたのだ。  その教師は、ダンがその生徒をいじめているものだとでも思ったらしい。  温厚なダンもこの行為にはきれた。  その教師に飛びかかったものの、周りに抑えられ、修学旅行明けに三日間の停学までくらってしまった。  彼はますます学校が嫌いになったし、仲間と隠れて遊びで吸っていたタバコも、本気で吸うようになっていた。  不登校にならないでいられたのは、母親の存在が大きかったからだ。  女手一つで高校まで行かせてくれたのに、悲しませるようなことはしたくなかったのだ。
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