第四章.夏を往く

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 ダンとヨシには、従兄弟同士である以外にも共通点があった。  二人とも、家族を大事にする気持ちを持っていて、そしてパンクロックが大好きなことだ。  二人はよくお互いの家に行き来しては、ブルーハーツやセックスピストルズ、クラッシュ、パティスミス、ダムドにイギーポップなんかのCDを聞き込んでいた。  パンクロックは、彼らにとって、起爆剤であり、道標のようなものなのだ。  二人にとって、自分達で音楽をつくりたいと思うのは、自然な成り行きだった。  今では、二人でギターをかき鳴らしながら歌うことがお互いの不文律となっていた。  そして、この夏、ダンとヨシは一つの大事な計画を実行することに決めていた。  パンクバンドをつくる――!  ブルーハーツやクラッシュのように、思いっきり叫んでみたくてたまらないのだ。  普段はクールぶろうとしているヨシも、この話になるといつもより早口になる。 「俺のバイト先に、ドラムをかじってる奴がいてさ。いいやつだし、もちろんロック好きだ。俺はそいつを誘ってみる」 「俺もさ、前から、一緒にバンドやってみたかったやつが一人いるんだよな。少しイカれてる奴だから、そいつを誘ってみるよ。同級生だ」 「おし、決まりだべ!」
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