9人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
第五話.青い鷹ども
一.
ダンは、同級生の万武夫(通称タケ)にバンドの誘いをかけた。
タケは、二つ返事で快諾してくれた。
タケという少年は、いつもおちゃらけていて、気性が荒く、退学スレスレのヤンチャ坊主だ。
肌の色は浅黒く、頬が張っていて、両目が細長かった。
何よりもこの少年を特徴づけているのは、前歯が二つともないことだ。
バイク事故で失ってしまったらしい。
そんなタケは、気性のわりには手先が器用で、マジックをやってはみんなを驚かせるのが得意だった。
ヨシの方は、マンガ喫茶のバイトで知り合った同い年の少年を誘った。
名前は、岩田満(通称ミツ)。
前のバンドで、ドラムを経験していた。
気立てがよく、気が利いて、ロックが大好きな少年だ。
ソフトリーゼントの髪がトレードマークで、目元が涼しく、鼻が大きくて、ドラマーらしく肩幅が広い。
ミツも、二つ返事でOKしてくれた。またバンドをやりたかったし、ヨシの音楽好きには以前から共鳴していたのだ。
これで、四人のバンドメンバーが揃ったことになる。
数日後、このメンバーが、『一竜軒』で顔を合わせることになった。
オーナーの竜次は新顔の二人、タケとミツを見ると、「あらら、また変なのが増えちまった」と言って、いつもどおり冷えたコーラを持ってきてくれた。
「ちゃんと、ラーメン食ってけよ」と竜次がうるさく言うものだから、新参の二人ともラーメンを頼んだものの、いざ口にすると、目を点にしてしまっていた。
「おいおい、ここラーメン屋だよな?」と、タケが小さな声でダンに顔を寄せると、「うん、なんかごめん」と、ダンは顔をしかめてみせた。
「ラーメン屋来てんのに、カップヌードルが恋しいんですけど」と言って、タケは箸を置いた。
ミツはといえば、真面目な性格がそうさせるのか、変な汗をかきながら、必死でラーメンをすすっている。
いちおう腹を満たすと、四人は、音楽とバンドの方向性について語りあった。
最初のコメントを投稿しよう!