第五話.青い鷹ども

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第五話.青い鷹ども

                     一.    ダンは、同級生の(よろず)武夫(通称タケ)にバンドの誘いをかけた。  タケは、二つ返事で快諾してくれた。  タケという少年は、いつもおちゃらけていて、気性が荒く、退学スレスレのヤンチャ坊主だ。  肌の色は浅黒く、頬が張っていて、両目が細長かった。  何よりもこの少年を特徴づけているのは、前歯が二つともないことだ。  バイク事故で失ってしまったらしい。  そんなタケは、気性のわりには手先が器用で、マジックをやってはみんなを驚かせるのが得意だった。  ヨシの方は、マンガ喫茶のバイトで知り合った同い年の少年を誘った。  名前は、岩田満(通称ミツ)。  前のバンドで、ドラムを経験していた。  気立てがよく、気が利いて、ロックが大好きな少年だ。  ソフトリーゼントの髪がトレードマークで、目元が涼しく、鼻が大きくて、ドラマーらしく肩幅が広い。  ミツも、二つ返事でOKしてくれた。またバンドをやりたかったし、ヨシの音楽好きには以前から共鳴していたのだ。  これで、四人のバンドメンバーが揃ったことになる。  数日後、このメンバーが、『一竜軒』で顔を合わせることになった。  オーナーの竜次は新顔の二人、タケとミツを見ると、「あらら、また変なのが増えちまった」と言って、いつもどおり冷えたコーラを持ってきてくれた。 「ちゃんと、ラーメン食ってけよ」と竜次がうるさく言うものだから、新参の二人ともラーメンを頼んだものの、いざ口にすると、目を点にしてしまっていた。 「おいおい、ここラーメン屋だよな?」と、タケが小さな声でダンに顔を寄せると、「うん、なんかごめん」と、ダンは顔をしかめてみせた。 「ラーメン屋来てんのに、カップヌードルが恋しいんですけど」と言って、タケは箸を置いた。  ミツはといえば、真面目な性格がそうさせるのか、変な汗をかきながら、必死でラーメンをすすっている。  いちおう腹を満たすと、四人は、音楽とバンドの方向性について語りあった。
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