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前歯がないタケは、特に息まいていた。
自分のありあまったエネルギーを、新しいことに注ぐチャンスだと感じているのだ。
彼は、いちいち鼻をふくらませている。
「やっぱ、パンクバンドだろ!」
みんな、この点は一致していた。
自分達がハチャメチャにやっていくには、やっぱりパンクロックこそがふさわしいはずなのだ、とダンは思っている。
けれど、誰がどのパートをやるかについてはもめた。
ダンもヨシもギターをやりたかったし、楽器未経験のタケまでギターをやりたいと言い出していた。
ミツは、今回はベースをやりたがっていたけれど、ダンもヨシも、彼にはやはりドラムをやってほしかった。
ミツは、唯一のドラム経験者なのだ。
そんなミツは、早くもこの集団の長男のようなポジションになっている。
「ひとまず、みんなで色んな楽器をいじってみりゃいいじゃん。何が自分にいいかなんて、音を通して感じればいい」
ミツのこのクールな一言に、みんな、ようやく納得したようだった。
なので、四人はひとまずスタジオに行ってみることにした。
といっても、この時点で一通りの楽器ができるのは唯一楽譜が読めるミツだけで、各自、最初は気の向くまま好き勝手にギターとベースをべろんべろんと弾き、ドラムをハチャメチャに叩いてはしゃぐ有様だ。
少し慣れてくると、ミツが叩くドラムの8ビートを基調に、やはりミツが教えたダイアトニック・コードをそれぞれが弾いて、グルーブ感を出す真似事もしてみた。
そんな遊びが一週間ほど続くと、それぞれの役割は自ずと決まっていった。
まず、ボーカルは歌詞の作者がその曲を歌うという、一人のボーカルに固定しないやり方にした。
その方が、歌に感情移入しやすいと、ヨシが提案したのだ。
基本パートとしては、ギターはダンとヨシで、タケはベース(低音が下半身に響いて気持ちいいらしい)、ミツは結局ドラムにおさまった。
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