第一話.路地裏で

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 彼の姿が見えると、ダンはぶっきらぼうに手をふってみせた。 「よお、ヨシ」  ヨシはランドマークにつながる広場の隅で、あぐらをかいていた。  手にはアコースティックギターが握られている。  いつもの調子で軽口をたたきあってから、適当にギターのチューニングをし、二人は歌いはじめた。  梅雨時の風が本当に生暖かい季節だった。  教師って奴が  俺を俺でなくそうとしてる  俺達 知ってんだぜ  奴らは工場長のように  出来のいいロボットを 造ろうとしてるだけ  あそこのネジがほしいんだろ?  だがおまえさんにゃ 手に入らない  さびついたイスが 笑ってらぁ  もう 過ぎたことだって  どんな時も笑っていただろ  いらいらしたりもしたけどさ  二、三人の通行人が、じろっと彼らを見ては、足早に通っていく。  下手くそな歌はどこかに届くこともなさそうに、夜空に吸い込まれていった。  けれど、ダンはがっかりしたりはしない。  だいたいはこんな夜だし、何よりもこういう何もない時間に、居心地のよさを感じているからだ。
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