第五話.青い鷹ども

3/7

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
                     二.  夏休みが始まった。  セミが腹の底から目いっぱいにさけびだす頃、四人の少年達は、それぞれの音を鳴らすことに夢中になっていた。  ある時は路上で、ある時はスタジオで――  綺羅はといえば、二人から四人になった彼らの音楽もよく聴きにいっていた。  四人に交じって、少しだけ歌う時もあった。  みんな、綺羅の妖しく力強い歌声が好きだと云った。 「おまえら、もうやったのか?」  デリカシーのない下品なタケは、よくそんなことを言って、ダンと綺羅をからかった。  その度に二人は首を横にふり、あきれたような顔をしてみせた。  綺羅にいたっては、「タケ、あなたって、ホントに竹ね。中が空っぽで、さかりのついた棒しかないもの」とまで言った。  タケは、そんな綺羅も好きだと云って笑った。  最近は、ダンとの奇妙な生活を共にしているうちに、彼には他人じゃない何かを感じるようになっていた。  それは、お互いの歩調を守るものであり、幼いものでもあり、兄弟や友達や恋人といった枠にもあてはまらない、漠然としたものだった。  綺羅はそんな関係を大事なものと感じていたし、まどろっこしいものとも感じていた。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加