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三.
暑さで、空が揺れている。
この日も、綺羅を入れた五人は一竜軒で涼んでいた。
ヨシが、うちわを煽ぎながら言った。
「今日こそ、バンド名を決めようぜ」
四人のバンド名は未だに決まっていなかった。
それぞれ、音を出すのに夢中で、肝心な看板名を置いてけぼりにしていたのだ。
とはいえ、周りからロクデナシと言われている少年たちが提案したバンド名はどれも、まさにろくでもない出来のものばかりだった。
『デビルたち』、『あめんぼポンチョ』といったセンスのかけらもない意味不明な命名ばっかりで、竜次なんかは、カウンターでどんぶりを磨きながら、わざとらしく笑いを堪えている。
たまりかねたように、ヨシは声を荒げた。
「綺羅はなんか、あるか?」
綺羅は、自信有り気に頷いてみせる。
「ドブんちゅ」
「……竜次さん、助けてくれ」
顔をしかめながら竜次に助言を求めるヨシ。
竜次は変な笑顔を張りつかせたまま、こう言った。
「おまえらが好きな色とかをヒントに考えてみたら?」
みんな、その提案に、「ああ」といった風になんとなく頷いた。
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