9人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
二.
ガードレールに寄りかかるようにしゃがみこんでいるのは、一人の少女だった。
「なんだおまえ?」
「女よ」
ヨシは、ダンと顔を見合わせた。
「わかってんよ」
街灯の明かりが強いので、最初は、ヨシは少女の姿をよく確認することができなかった。
が、その少女がようやく立ち上がって、街灯に照らされた時、この少女の意外な美しさにヨシは思わず息を呑んでいた。
金髪のさらさらヘアーを肩まで垂らし、秀麗な瞳でじろっ、と自分達を眺めている。
桃色の唇がこの街のたおやかな夜によく似合っていた。
けれども、この少女の内から溢れてくるどんよりとした陰気くささのようなものに、ヨシは近寄りがたいものを感じた。。
普通、この年くらいの少女なら、もうちょっと、柔らかい表情をするものだ。
ヨシが次の言葉を探している間に、少女は、桃色の唇を少し開けた。
「ねえ」
ダンが「なんだ」と小さな声で答える。
「歌、よかったわ」
少女は、相変わらずの無表情のままだ。
思わず、ヨシは、んっ、と声をあげた。
「そう? 聴いててくれたのか。サンキュー」
「ねえ」
「ん?」
「どっちか、今夜泊めてくれない?」
最初のコメントを投稿しよう!