第一話.路地裏で

5/6
前へ
/180ページ
次へ
 突然のぶっとんだ発言に、二人とも、コンクリートみたいに固まってしまった。 「なんだって?」 「泊まるとこがないの。家がなくなったから」  こんなことを言っているくせに、少女は今も感情を見せない。  ヨシはどうしていいか分からないことを伝えるために、半笑いしている。 「冗談だろ? どんなオチを用意してるんだ?」 「マジで、家がねえのか?」  そう答えつつも、ヨシは、この少女のことが面白くなってきていた。  妙な緊張はするものの、この少女とやりとりをしていると、まるで自分が一味違う男になった気分になってくるのだ。 「タダとは言わないわ。手伝えることがあれば、手伝ってあげる」 「なんのお手伝い?」とは、二人とも言えなかった。  少女の方が、自分達よりも色々な意味で上手なのは、明らかだった。 「ダン、おまえ、母親と二人暮らしだろ? 一つ、部屋空いてたじゃん」  ヨシがそう言うと、ダンは困った顔をした。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加