第一話.路地裏で

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 二人の家庭状況を比較した場合、ダンの方が、このイカれた少女を泊められる状況がそろっていた。  ダンは、母親と二人暮らしでマンションに住んでいる。  彼と母親の部屋とは別に、四畳半程の部屋があり、そこはちょっとした書斎になっていた。  ヨシが指摘したのはその部屋のことだ。  ヨシは四人家族で、その中にはほとんど寝たきりのおばあちゃんがいる。  彼はこのおばあちゃんによくなついていたので、今ではよく彼女の面倒をみるようになっていた。  当然、いきなりこんな少女を家に入れるわけにはいかなかった。  ダンは唾を呑みこむと、思い切ったように言った。 「よし、しゃあねえ、俺んちに来いや」  ダンは物事というものを、あっさりと決断してしまうところがある。  彼がそう決心してしまうと、勝手なもので、ヨシは内心悔しい気持ちになった。  こんなかわいい娘と一緒に過ごせるチャンスなんて、そうそうありはしない。  だから、この場はさっさと立ち去ってしまうのが賢明に思えた。 「んじゃあ、俺ぁもう行くぜ……おい、ダン!」 「ん?」 「ゴムはつけろよ」 「ああそうか、この時期、ジメジメしてるもんな。あそこのコンビニで業務用のゴム売ってるかな。ディオちゃんのグリップに巻かなきゃ」  やれやれ、とつぶやき、ヨシはバイクが置いてある場所に向かって歩いていった。
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