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二人の家庭状況を比較した場合、ダンの方が、このイカれた少女を泊められる状況がそろっていた。
ダンは、母親と二人暮らしでマンションに住んでいる。
彼と母親の部屋とは別に、四畳半程の部屋があり、そこはちょっとした書斎になっていた。
ヨシが指摘したのはその部屋のことだ。
ヨシは四人家族で、その中にはほとんど寝たきりのおばあちゃんがいる。
彼はこのおばあちゃんによくなついていたので、今ではよく彼女の面倒をみるようになっていた。
当然、いきなりこんな少女を家に入れるわけにはいかなかった。
ダンは唾を呑みこむと、思い切ったように言った。
「よし、しゃあねえ、俺んちに来いや」
ダンは物事というものを、あっさりと決断してしまうところがある。
彼がそう決心してしまうと、勝手なもので、ヨシは内心悔しい気持ちになった。
こんなかわいい娘と一緒に過ごせるチャンスなんて、そうそうありはしない。
だから、この場はさっさと立ち去ってしまうのが賢明に思えた。
「んじゃあ、俺ぁもう行くぜ……おい、ダン!」
「ん?」
「ゴムはつけろよ」
「ああそうか、この時期、ジメジメしてるもんな。あそこのコンビニで業務用のゴム売ってるかな。ディオちゃんのグリップに巻かなきゃ」
やれやれ、とつぶやき、ヨシはバイクが置いてある場所に向かって歩いていった。
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