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第四章.夏を往く
一.
中間テストも終わって、いよいよ、夏休みに突入しようとしていた。
ダンとヨシにとっては、高校最後の夏休みとなる。
テストから解放されると、ダンは中華街の近くにある古ぼけたラーメン屋『一竜軒』に行き、そこでヨシと会った。
ここのラーメン屋は夜の一時まで営業していて、味噌ラーメンが一応の売りだ。
オーナー兼料理長の竜次は無愛想な男だけれど、どこかとぼけていて、ダンとヨシにはよくツケでジュースを出してくれた。
「竜次さん、いつもので」
「また来たか、くそガキどもが。ラーメンも食わねえくせに」
竜次はそんなことを言いながらも、二人に冷たいオレンジジュースをだしてくれる。
ヨシはオレンジジュースにストローをさし、あくびをした。
「テスト、どうだった?」
「まあまあかな」
「けどさ、おまえみてえなアホが大学目指してんなんてさ」
「だよな」
確かに、それは周りの連中からすればおかしなことだった。
ダンは、進学を希望するような前途有望な生徒なんかじゃないのだ。
ダンは、特に不良ぶってきたわけじゃなかった。
ただ、彼は、パンクロックが大好きで、自然と人目をひく恰好をするようになっただけだった。
気が付けば、その恰好に見合うだけの野次を受け、喧嘩も幾度か売られ、はみだし者になっていた。
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