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学校に着き、クラスメイトに今朝の踏切での出来事を話した。
「お前知らなかったのか」
「何を?」
「あそこの踏切さ、隣の市の中学生の女の子が飛び込んだって話」
「女の子が、飛び込んだ?」
「そう。それも朝の通勤や通学時間帯でさ。何でも付き合っていた彼氏に振られたショックで飛び込んだって話だぜ。お前が見たの絶対にその女の子の幽霊だって。朝からご愁傷さま」
クラスメイトは俺だったら絶対に嫌だと首を振りながら言った。
「それと、その女の子の話でもうひとつあった」
「何?」
「死んだ女の子の遺書。結構物騒なこと書いてあったってネットで話題になってた。ええと、『私は別れると言われてもう耐えられません。死んできます。あなたが私を忘れないように、あなたがよく通る場所で死んできます』って。あそこ通るとき、気を付けろよ」
気を付けろとは言われても、俺にはどうしようもない。あの踏切を通らないと学校には行けないのだ。女の子の幽霊が出るなんてただの噂だと、そう思いたかったが、次の日も踏切のところで電車を待っていると人混みの中で昨日の女の子がいた。時刻は7時42分。あと数秒で電車が目の前を通る。後ろからじっと見ていると、やはり女の子はまた遮断機が降りている踏切をくぐって電車に飛び込んだ。電車も周りの人々も特に何も変わらない。遮断機が上がると一斉に動き出し、女の子が飛び込むという非日常は今日も俺の目にしか映っていない。
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