さよなら昴

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最愛の妻。最愛の旦那。 妻のお腹には小さな命。 子供のためにと小さな家が今、大工たちの手によって作り上げられている。 お互いが独り身のときにコツコツとしていた貯金が小さな家へと変わる。 小さな家が出来るまでは狭いアパートで二人暮らし。 節約の生活の様に周りの人々は「苦労してるんだね」と眉をひそめるが、当の本人たちは幸せこの上ないと感じていた。 「名前、何にする?」 「うーん。僕らの年齢だと最初で最後の子供になるから賑やかな名前がいいな。兄弟がいなくても寂しくないような。いつか名前の意味を知ったら喜んでくれるような」 「そうね。私たち、もう四十過ぎてるものね」 遅くに出会い、遅くに籍を入れた二人。 お腹の子が二十歳を迎えるときには六十を過ぎている。 早くに結婚して早くに子供を授かった夫婦より、はるかに子供との時間は短い。 だからこそ、一つ一つに強い想いを込めたい。
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