さよなら昴

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「昴ってどう?」 「うん。昴。星団の名前なんだ。沢山の星が集まる昴。いつも星が見守ってくれるような名前」 布団を並べて会話をする狭い部屋。電灯は寿命が近いのか、ちかちかと点滅をしている。 「昴か。いいね」 妻の提案に旦那は、うんと頷く。 「兄弟がいなくても寂しくないようにか。寂しい想いはさせたくないしね」 旦那は妻のお腹をそっと撫でる。 「きっと大丈夫だよ」 妻の言葉を聞いて旦那は口角をあげる。 「さぁ寝ようか。明日も頑張らなきゃだしね」 旦那は立ち上がり、灯りを消す。 節約をし、共働きをする二人に暇はない。 妻も子供が生まれるギリギリまで働くつもりだ。 哀れに思う人もいるが、二人は幸せだった。 ある時までは。
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