マタニティ・ホワイト

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川辺を散歩していると、重たそうな腹をした猫が通りかかった。 「あ、猫ちゃんがいる。お腹が重たそうだよ。」 「あの中にね、たくさん赤ちゃんが入ってるのよ。」 聞くなり猫に向かって走り出そうとする洋介の腕を掴んで止める。 「お母さんになるって大変なことなのよ。だから追いかけちゃだめ。」 「おかあさんも、大変?」 名残惜しそうに猫を目で追いながら私の方に向き直って、言った。 「大変よ。でも、洋介が素敵なお兄ちゃんになってくれたら、大丈夫。」 洋介はすっかり機嫌を取り戻してわたしのお腹を何度かさすると、走って先に行ってしまった。 遠くからわたしを振り返って、 「おかあさんだいすき!!」
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