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「死んでたんだ。自分で、呼吸用のチューブを抜いたんだよ。動くようになった腕で。」
待合室のざわめきをプールに潜ったときみたいに遠くに感じてただ明生さんの言葉だけが私に届いてくる。
「やっぱり、幸せかどうか選ぶ権利を奪っちゃいけないと思う。僕の兄は、その上で死ぬことを選んだけど、産まれてなかったら、何にもないから。」
明生さんの目からぱたぱた涙が溢れてくる。
わたしは叱られた子供みたいに、考えを胸中で巡らせたけど、口からは一つの言葉も出てこない。
明生さんは、わたしじゃなかった。
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