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「久しぶりやん。」
そう言ってそっと陽平の隣に座り、
「今度は寧々ちゃんやねんな。何となくあんたの好みがわかる気がするわ。」
「ボクも友だちからの噂を聞いてやってきたんですが、思った以上にボクの好みの女の子やったからビックリさせられました。」
「リエちゃんとは少し雰囲気は違うけど・・・。まあエエか、また彼女めがけて通ってあげてな。店としては一人でも多くのお客さんが来てくれた方が賑やかでエエわ。」
「約束はしませんよ。彼女がボクを気に入ってくれんと、ボクも通えませんからね。」
「あんたやったら大丈夫やわ。あんたのこと悪くいう女の子なんか一人もおらんから。」
「そんなに持ち上げても何も出ませんよ。自分の評価ぐらいわかってますから。」
「もうちょっと自信持ちや。あんたみたいに大人しい・・・、いやいや優しいお客さんやったらみんな大歓迎やで。」
「せいぜい優しくして、気に入ってもらえるようになりますわ。」
そんな会話をしているうちに場内コールが聞こえてくる。
――寧々さん二番テーブルへバック――
寧々が陽平のシートに戻ってくるというコールである。
「しっかり楽しんで帰りや。」
「ありがとうございます。」
他愛の無い会話だったかもしれないが、カレン嬢の優しさが感じられる会話だった。
「ただいまあ。」
笑顔で陽平の隣に戻ってくる。
「ヘルプやったから短かったでしょ。」
そう言って戻ってくるなり、陽平の膝の上に乗ろうとする。陽平はその動きを遮って隣に座らせた。
「隣に座って。そして背中をボクの方に預けて。」
「ん?どうするん?」
陽平は右に座っていた寧々の背中を自らの左の膝にもたれさせ、やや仰向けになるような体勢をとらせた。自然と寧々の顔が陽平の真下に来る。
「キミの可愛い顔が正面で見られるやん。ボクの腕の中にキミがいる。エエ感じでしょ?」
「でもなんかずっと見つめられて恥ずかしいやん。」
「ボクは恥ずかしくないで。キスしてもいい?」
「うふふ。」
寧々は返事をせずに、陽平の首に腕を巻いて自分の方へと引き寄せた。
柔らかな唇は、間違いなく陽平の心を虜にしていった。陽平も自らが新しい恋に目覚めようとしている自分に気付き始めていた。
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