14人が本棚に入れています
本棚に追加
「だからエエねやん。香水の匂いは嫌いや。そう言うたら寧々ちゃん、爪も短いな。ボク、長く伸ばしてデコとかいっぱいつけてる爪ってあんまし好きやないねん。お願いやから伸ばさんといてな。」
「大丈夫やで、ウチもツメ伸ばすん嫌いやし。」
陽平にとっては思いも寄らない細かなポイントまでが彼好みの様相だった。
なんだかホッとした気分で、再び寧々の体を抱き寄せる。
そんなタイミングだった。場内アナウンスが寧々と陽平を引き離す。
――寧々さん八番テーブルフリータイム――
「呼ばれたから行って来る。フリーやからすぐ帰って来るし。」
当時の寧々は入店してまだひと月に満たない程度。固定客も少ない。彼女によると、複数回指名があったのは陽平を含めてまだ二、三人程度らしい。
彼女が入店するよりも少し早いタイミングで他に二人ほど入店しているようだが、多くの客は寧々よりも他の彼女たちを選択している。この店の客は、おっぱいの大きな普通の女の子よりも、爪が長くてキラキラしているギャルっぽい女の子が好みのようだ。まあ、好みは人それぞれだからね・・・。
それでも陽平にとっては、そんな状況ですら、寧々を独占できる可能性が高くなるという、好都合な事実であった
――寧々さん二番テーブルへバック――
やがてフリー客への顔見せが終わり、寧々が陽平のシートへ戻ってくる。
「ただいま。」
「おかえり。どんなお客さんやった?エッチなことされへんかった?」
「ちょっとエッチなオッサンやった。フリーやのに手え入れようとするし、アカンでって怒ったってん。」
「そやけど、お客さんつかな給金出えへんのちゃうの?ちょっとぐらい我慢して指名もろた方がエエンちゃうん?」
「そうかもしれんな。ウチ、この店のナンバーワンになれるやろか。」
「そりゃ、寧々ちゃんの努力次第ちゃうかな。でも、そんなんになったら、もうボクなんか相手にしてもらえんようになるんやろな。」
「そんなことないで、ヨウちゃんだけは特別やし。」
「まだボクかて二回目やで。」
「ウチに初めてプレゼントくれたお客さんやん。特別に決まってるし。」
そう言って陽平の首に腕を回し、唇のサービスを丹念に施す。同時に甘い香りが陽平を包んでいく。それこそが陽平が求めていた夢の世界だった。
「可愛いな。」
陽平は寧々の目を見つめて囁く。
最初のコメントを投稿しよう!