=模索する想い=

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「ボク、そんないっつも泣いてたりせえへん。ヒデちゃんよりちょっとだけ本気になりやすいだけやんか。」 すると加藤女史は大きく溜息を吐いて陽平の肩を叩く。 「あのな、夜のお店の女の子に本気になるってアホちゃうか。完全に騙されてるだけやんか。しっかりしい。」 「ホンマに仲良うなるんですよ。デートもしたし、次に会う約束もしたはずやったし。」 「デートっていうたかて、同伴出勤しただけやんか。おねいさん、よう言うてやって下さいね。あっ、いらっしゃい。」 マスターは、そのタイミングで店に入ってきた客の方へ移って行く。 「とりあえず食べよ。これは美味しそうや。」 「うう。今から食べると自棄食いやな。胸焼けしそうや。」 加藤女史は豪勢なランチを頬張りながら、さらに話を進める。 「今度の日曜日、ココに行っといで。」 そう言ってテーブルの上に置いたのは、結婚相談所のチラシだった。 「一回、ちゃんとした結婚相談所に行ってみたら?風俗よりもエエ子がおるかもよ。」 「ええです。自分の相手は自分で探しますから。」 「そう言わんと一回行っとき。ウチの友だちもここの紹介で結婚した子おるし。」 「一緒に行ったろか?」 「それもええです。エエ年して会社の先輩同伴やて恥ずかしいにも程があります。」 「それやったらな、このバーに行ってみ?」 次に取り出したのは、あるバーのメンバーズカードだった。店のロゴと名前だけがカードいっぱいに描かれている。その店の名前は『ロンリーナイト』。なんだか聞いたような店の名前である。 「ん?これって何ですか?」 「今もやってるかどうか確実やないけど、七~八年も前かな。ウチが今の旦那と知り合った場所。入店の条件は一人であること。結構な人たちが出逢いを求めて飲んでるで。」 「そんな古い話、今も残ってる訳ないやないですか。」 箸の進まぬ陽平に比べて食欲旺盛な加藤女史は、早くもデザートのフルーツに手をつけはじめる。 「ところがな、ウチのだんなが最近店の前を通ったら、まだ看板があるって言うてはってん。昼間やったらしいけどな。」 「これて加藤さんの会員カードですか?」 「そうや。ウチも先輩からもらってん。せやから次はアンタにあげる。有効に使いや。」 「そんな漫画みたいな話、ホンマにあるんですか。」 「あのな、宝くじも一緒や。買わな当たらへんやろ。その店も行かな出会えへんで。」
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