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「そんなもん、なんの役に立つ?オレとお前は別人やし、日頃からオレのこと結構馬鹿にしてたやんか。」
「それがな、最近見直すようになってん。どうもオレのやり方はアカンらしい。会社の女の子が言うにはな、最近は優しさが優先やって言うねん。それで思い出すのが陽平先生のやり方やんか。今まではイマイチやったかも知れんけど、これからはおまいさんのやり方が評価されるんちゃうかという訳や。」
いつにもまして荒い鼻息だ。目も血走っている。コレは相当本気なのかもしれない。陽平は真剣な眼差しで秀哉を凝視する。
「どっちにしても、ヒデちゃんの気持ち次第なんちゃう?相手にもよりけりやし。もう三十路やで、若造と違うんやから自分のことは自分で考えな。」
「わかってるけど、例えばの話を聞きたいねん。プレゼントは何がええ?」
陽平は困った顔をするしかない。だいたい、そんな想定など考えたこともなかったし、寧々に初めて会いに行ったときもプレゼントなんて用意しなかった。
「モノで釣るんやなくて、自分のことを正直に話したら。それ以上ヒデちゃんにアドバイスすることなんてなんもないわ。」
「ちぇっ、冷たいなあ。親友が本気で悩んでんのに。例えばって言うてんねん。」
「ほんなら言うけどな、初対面の女の子にプレゼントなんかあげたこと無いし、食事に誘ったことも無いし、話題なんかそのとき次第や。」
「なるほどな。普通に接したらええねんな。って、何にも答えになってないやん。」
「そんなんしか言いようがないわ。もう帰るで。明日も普通に仕事やし。残業続きで疲れてるし。今日はご馳走さまでええねやろ?」
「また奢ったるさかい、呼んだらすぐ来てや。」
陽平はそれに答えずに席を立ち、上着を羽織って店を出る。
なんだかモヤモヤとした感情が湧いてくる。
自分は優しいのか?さにあらず。相手の気分を害さないようにしているだけだ。秀哉が思っているのと少し違うと思う。そう思いながら帰り道を歩いていた。
「何かプレゼントをした方がいいのだろか。」
などと考えながら。そんな想いに揺れ始めていた陽平だった。
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