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「新しい女の子の様子も見て来たるから、明日、楽しみにしとき。」
陽平は秀哉の言葉も耳に入らぬかのように、虚空の一点を眺めていた。
「ほらほら、新しいジョッキが来たで。これだけ空けたら、今日はもう帰りや。」
秀哉はここまでの勘定を払い終わると、颯爽と店を出て行った。
一人残された陽平は、ケータイを取り出して、リエにメールを打ち始める。
店に通っている間、女の子たちは馴染みの客とメールで連絡をやり取りしていた。しかし、店を辞めると同時に連絡が取れなくなることが常であった。
陽平もわかってはいるが、それでもメールを送るのである。
「リエちゃん、キミにプレゼントしようと思ってたペンダント。いつかキミに渡せるその日まで、ボクの机の引き出しにしまっておくからね。」
送信ボタンを押して、唐揚をほおばり、ビールを注ぎこむ。
数秒後、ケータイのメロディが流れた。
一瞬、返事が返ってきたと思い、喜び勇んでメールを覗いた途端、陽平は闇の底へ突き落とされた。今までは、返事が帰ってこないだけの音信不通だったが、今度はアドレスが完全に削除されたとみえて、不達メールとして帰ってきたのである。もはや、陽平がメールを送ることさえ拒否されてしまったのだ。
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