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そう突っ込んだスズリが続ける。
「コトハ。俺達は君のことを大切に思ってる。君が苦しむのは見たくない」
「コトちゃん......。無理しちゃ嫌だよ」
ナタリアも声をかけた。
わずかな沈黙を挟み、コトハが口を開く。
「ウチは、......ウチが一人で戦う!うちが前に出る!」
「だったらオレはさらにその前に出る!」
間髪入れず返した。
「なっ......やったらウチはその前や!」
「オレはその前だね!」
「ならウチはその前に!」
「こうなるから、仲間は肩を並べて戦うんだろうが!!」
初めて、コトハが振り返った。
散ったのは涙か。彼女の目は赤く赤く充血している。
「仲間を失いたくないのがお前だけだと思うな!辛い目に合わせたくないのが、苦しんでる姿を見たくないのがお前だけだと思うなよ!」
「っつ......!」と、声にならない声を上げたコトハ。
「みんな、守りたい仲間がいる!全員がそう思ってるからこそ、肩を並べるんだろ!」
一歩、コトハに近づいた。
彼女は後ろに一歩下がろうとして、止まった。
「一緒に戦おうぜコトハ。オレ達、仲間だろ?」
腕を伸ばす。彼女は、その腕をじっと見つめ、視線をあげた。
同時、「ヒック」と喉を鳴らし大粒の涙を流し始めた。
「......置いて行かへん?......一人にせぇへん?シトちゃんみたいに、目ぇ覚まさへんとか、無い?」
不安だったのだろう。寂しかったのだろう。
ボロボロと溢れる涙を拭きながら、涙声で絞り出したその言葉に、
「約束する。オレは、絶対コトハを一人にしない」
力強く頷いた。
「俺もだ、コトハ」
「私もだよコトちゃん!」
スズリとナタリアも答える。
そんな俺達を見て、また涙が目を覆って、それを左手で拭いながら、
ゆっくりと、優しく、でも確かに、差し出したオレの手を、コトハは握った。
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