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『レベル4進行状況、ゲートまで後1500!』
無線越しに司令室の声を聞きながら、オレ達は、レベル4の正面に立った。
発達した顎が地面を削りながら進む、八本足のキャンサー。
遠近感を狂わせる大きさのそれは、相変わらず、俺たちのことなど目に入っていないようだった。
「さっきの作戦で行くぞ、みんな!」
叫ぶと、それぞれから了解の返事が返ってくる。
まず動いたのは、スズリ。
「律する三剣、君臨する双王。以ってしても未だ空は晴れず曇天。力無き、力無き君臨者よ。汝、人の王。神にあらず。奢るな人よ。その両の手が届かぬ範囲、望むのは傲慢。動かざる怠惰。だがこの一瞬。神の瞬きの間。人は神より出でて神に等しい、地上を奔る、」
何も持たない腕を、まるで刀を薙ぐ前のように後ろに構える。
「〈一閃〉」
スズリは腕を薙いだ。
その一瞬。腕が加速したそのほんの一瞬だけ造られた全長300メートルの刀。
僅かな時間でも大量の言霊を持って行くそれは、レベル4の八本足を全て斬り捨てた。
『アアアアア!!!』
口を大きく開けて、レベル4は吼える。
「待ってました!」
続いて、オレとナタリアが走る。
ナタリアが作った壁が顎の両側に伸び、顎を固定するように、二つの壁の間にまた壁の橋を架けた。
口を閉じられなくなったレベル4の顔の前に、オレは飛び出た。
「くらええぇぇぇ!!」
大きく腕を振りかぶって叫ぶ。
「『守るべきものがある限り、心は決して折れはしない。心が折れない限り、人は何度でも立ち上がれる』!〈仮名:遺言霊熱機関〉、〈炸裂〉!!」
腕に纏った巨大な炎球を、拳を前に突き出すと同時に撃つ。
開いた口の中に吸い込まれて行く炎球。
喉の奥で炸裂し、口内から大量の黒煙を吐き出させた。
今の一撃で、身体の奥まで穴が開いた。
「いけるぞ!コトハ!」
待機していたコトハに叫ぶ。
彼女は大きく頷いた。
「こちら戦場の奏者!極東戦線より、奏でるは重砲の追復曲 !我が言葉は、決して途切れぬ歌なれど、その一言の軽きを知る!故に三等よ、彼の準備は出来ているな!?」
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