引金コトハ登場回

11/12
前へ
/12ページ
次へ
▽ 『レベル4進行状況、ゲートまで後1500!』 無線越しに司令室の声を聞きながら、オレ達は、レベル4の正面に立った。 発達した顎が地面を削りながら進む、八本足のキャンサー。 遠近感を狂わせる大きさのそれは、相変わらず、俺たちのことなど目に入っていないようだった。 「さっきの作戦で行くぞ、みんな!」 叫ぶと、それぞれから了解の返事が返ってくる。 まず動いたのは、スズリ。 「律する三剣、君臨する双王。以ってしても未だ空は晴れず曇天。力無き、力無き君臨者よ。汝、人の王。神にあらず。奢るな人よ。その両の手が届かぬ範囲、望むのは傲慢。動かざる怠惰。だがこの一瞬。神の瞬きの間。人は神より出でて神に等しい、地上を奔る、」 何も持たない腕を、まるで刀を薙ぐ前のように後ろに構える。 「〈一閃〉」 スズリは腕を薙いだ。 その一瞬。腕が加速したそのほんの一瞬だけ造られた全長300メートルの刀。 僅かな時間でも大量の言霊を持って行くそれは、レベル4の八本足を全て斬り捨てた。 『アアアアア!!!』 口を大きく開けて、レベル4は吼える。 「待ってました!」 続いて、オレとナタリアが走る。 ナタリアが作った壁が顎の両側に伸び、顎を固定するように、二つの壁の間にまた壁の橋を架けた。 口を閉じられなくなったレベル4の顔の前に、オレは飛び出た。 「くらええぇぇぇ!!」 大きく腕を振りかぶって叫ぶ。 「『守るべきものがある限り、心は決して折れはしない。心が折れない限り、人は何度でも立ち上がれる』!〈仮名:遺言霊熱機関(ヒートエンジン)〉、〈炸裂(バースト)〉!!」 腕に纏った巨大な炎球を、拳を前に突き出すと同時に撃つ。 開いた口の中に吸い込まれて行く炎球。 喉の奥で炸裂し、口内から大量の黒煙を吐き出させた。 今の一撃で、身体の奥まで穴が開いた。 「いけるぞ!コトハ!」 待機していたコトハに叫ぶ。 彼女は大きく頷いた。 「こちら戦場の奏者!極東戦線より、奏でるは重砲の追復曲(カノン) !我が言葉は、決して途切れぬ歌なれど、その一言の軽きを知る!故に三等よ、(あれ)の準備は出来ているな!?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加