引金コトハ登場回

2/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
-前回までのあらすじ- ユウキ、スズリ、ナタリアの三人は協力してキャンサーを倒す日々を送っていた。 楽しく暮らす三人だったが、日本では児童誘拐事件が連発していた。 さらに、言語世界にも変化が起こる。大阪、名古屋ゲートが収縮を始め、東京ゲートが拡大し始めた。 それに伴って、東京ゲート付近での戦闘は激化。毎回苦戦を強いられるユウキ達だった。 大阪ゲートが九割型収縮したことを受け、言語癌対策室大阪支部のキャスターが東京に来る事になる。 ▽ -前話の戦闘からの続き- 「はぁっ!!」 俺のかかと落としがレベル3に入る。 地に沈んだそれに脇目も振らず、正面から襲い来る他のレベル3に拳を振るう。 鳩尾に刺さった拳を〈炸裂(バースト)〉。 体内から吹き飛ばした。 気付かなかった。背後から迫っていた三体目。 大きく鈍器を振り上げ、俺を潰さんと降ろされ、 しかし、地面から生えた壁に遮られた。 「ユウキ君!」 ナタリアが壁に触れる。 壁から壁を生やす。即ち地面と平行に伸びた壁がレベル3を吹き飛ばした。 「助かった!ありがとうナタリア!」 「油断するのはまだ早いよ!次が来る!」 同時に、低い羽音が聞こえた。 巨大な昆虫型のレベル3がこちらに向かって飛来。 三本角をギラつかせて、キシキシと気味の悪い声で笑う。 「〈仮名:霊言熱機関(ハートヒートエンジン)〉!!」 ゴゥと音を立てて燃え上がる炎。 右拳に巨大な炎球を作り、撃つ。 旋回し回避。再び突撃を開始する。 「人の祈り。神の宿。立ち入る事の許されぬ神域。傷つくことを知らぬ霊脈。招き給え囲い給え。今両の手を打ち、神の御殿に人如きが篭る! 〈絶対加護域(エデン)〉!」 ナタリアの詠唱。二人を壁が囲い、外部と完全に遮断される。 音が消えた暗闇で、俺の炎だけが灯り。 「ユウキ君!」 「わかった!」 叫び、右腕を上に突き上げる。 「行くぞぉぉぉっっっ!!!」 かっこいい詠唱は、霊言霊を使う俺にはない。 ただ、気合いを込めるのみ。 威力より範囲。素早く動くあの虫型を仕留める一撃をイメージ。 イメージに合わせて腕部のアーマーが変形。 まるで大きく口を開けた竜の頭部のようなフォルムへと変わる。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!