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「お前、元から体内貯蔵できる言霊少ないだろ。しかも〈マシンガントーク〉は消費言霊量が多い。無理しすぎだ、コトハ」
優しく言ったスズリだったが、コトハはその腕を払い除けた。
「別に無理なんかしとらんわ。あんたらに戦わせるのが怖いだけや!」
そう叫び、踵を返す。
ふらつきながらゲートへ帰る彼女を、オレ達はただ見ていた。
「......あんたら弱いわ。足手まといは戦わんでいいで」
彼女が言い残したその言葉に、昨日のドラマじゃないけれど、
『それは、嘘』
そう思った。
▽
「ユウキ。君に、言っておきたいことがある」
司令室に帰った後、諏訪さんに呼び出されたオレは、休憩室へ二人で歩いた。
「オレンジジュースでいいか?」
そう聞いて投げられたジュース缶をキャッチし、「いただきます」と言って飲む。想像よりも酸っぱかった。
「スズリとナタリアは知っているんだが......、コトハのことだ」
ブラックコーヒーの缶を太い指で開け、向かいのソファに座った諏訪さんは続ける。
「あの子は、一人で戦おうとするだろう?」
「うん、そうだね」
「......あの子には、大阪支部に相棒がいた」
長い話になるが。と、もう一度コーヒーを啜った。
▽
同時刻本部内。
ことはは部屋で一人、ベッドの上で膝を抱えていた。
思い出すのは、あの楽しかった日々。
まだ、大阪支部のキャスターが二人だった過去。
▽
翌日、翌々日とキャンサーの進行は無く、嵐の前の静けさのように、どこか気持ちの悪い時間が過ぎた。
そして、3日後。
オレ、スズリ、ナタリアが先月遭遇し、なんとか追い返した末期キャンサー。レベル4が再び進行を開始した。
『B4です!至急、至急司令室へ集合してください!』
聞き慣れた放送の声は、いつもよりも焦っているように感じられた。
先月は〈レベル4一体の進行〉だったのに対し、今日は〈レベル4及びその他レベル多数の進行〉。
以前よりも危険度は増している。
「このレベル4は出来損ないで知性がない。代わりに75メートル以上の体長、能力〈再生〉を持っている。この前はユウキのお陰で勝てたが今回は分からん。さらに取り巻きがいる」
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