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僕はあの人のことが大嫌い。
僕をこんな狭くて、暗いところに閉じこめて。
「嫌い」
「嫌い」
「嫌い」
嫌いで嫌いでしょうがない。
どうやったらあの人のことを苦しめることができるだろう。僕をこんな目に合わしているだから、なんとかして苦しめたい。
僕は考えた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「そうだ、これだけ僕はあの人のことが嫌いなのだから、あの人も僕のことがきっと嫌いだ。その反対のことをすれば良いんじゃないかな」
「ということは・・・」
「そうだ、あの人のことを愛してみよう。愛して愛して愛し尽くしてみよう。愛することで、あの人のことを苦しめよう」
僕はあの人をことを愛した。
愛して愛して、愛し抜いた。
手を伸ばして抱きしめてみる。
近づこうと身体を擦り寄せる。
あの人の身体をなんとかして触ろうとする。
時には感情を振り乱して、
時には泣きじゃっくて、
今、自分に出来ること全てを使って、
あの人のことを身体全体で愛した。
これだけ愛せば、あの人は苦しいだろう。
やっぱりそうだ。
あの人は苦しそうな顔をしている。
立ち上がれないぐらい苦しい顔をしている。
「やった!僕の考えた通りだ!愛せば愛す程、あの人のことを苦しめられる」
僕をこんなところに閉じこめた罰だよ。
もっともっと愛して、もっともっと苦しめよう。
そう思った瞬間、僕のまわりに異変が起きた。
「あれ、どうしたんだ。急に身体が流されていくよ。僕の身体が溶けていくよ、、」
「あれ・・・」
「あれ・・」
「あれ・」
「・・・」
「・・」
「・」
「 」
僕の身体は消えて失くなった。
やっぱり僕のことが大嫌いだったんだね。
これで僕の顔も見ないで済むね。
これで僕と出会わなくて済むね。
これで僕とさよならできるね。
僕があの人を強く強く愛したから、さよならになったんだね。愛さなければ良かったのかな。
でもあの人はきっと僕のことが嫌いだから、これで喜んでいるはずだよ。
よかったね・・・お母さん。
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