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諸々のセッティングが終わった頃には外は薄暗くなってた。時間を見たら7時ちょい前。夏だからまだ夕方みたいでもいい時間になってるんだよな。
「あー、腹減ったぁー!」
栗原が情けない声で腹を摩る。栗原の事だからまたおおげさに言って……と思ったらマジだった。腹の虫が鳴ってた。
「ずっと作業だったんだもんよー!」
栗原に釣られた様に他の腹の虫も鳴った。
「なぁなぁ柊、炊き出しのメニュー何だった?」
ふいに栗原に聞かれて焦って吃った。
「え? あ、おにぎりと豚汁と唐揚げ」
「マジか! 肉! 唐揚げー!」
栗原が「うぇーい!」って両手を上げる。思わず釣られてハイタッチ。
え? 何コレ?
僕と栗原に接点なんて『同じクラス』以外無いぞ? 共通点なんて年齢・性別・国籍くらいだぞ?
すげぇなリア充パワー。コミュ力のバケモノかよ。陽キャをナメてましたごめんなさい。
陽キャのリア充パワーに圧倒されつつ家庭科室に戻ると、めっちゃいい匂いが充満してた。ますますお腹が減る。
「おかえりー」
「ただいまー! 初めて入ったけど!」
男子生徒が家庭科室に入る事なんかほとんど無いもんな。
「テキトーに座ってー」
グループの奴らはだいたい固まって、グループに入ってない僕達みたいなのは余った場所に。
「おかわりがあるのは豚汁だけだからなー」
「これだけあればお腹いっぱいだってー」
「女子はそうでも俺らは違うってのー」
おにぎりは女子が2つ、男子が3つ。唐揚げは同数の5つ。それに具沢山の豚汁。それでも足りない奴は出てくるんだろうな。
「どうせ何か持ち込みしてんだろ? 文句言うなら食わせない!」
それを言われたら黙るしかない。食べ盛りの男子高校生は食べ物を盾にされたら途端に無力化する生き物だ。
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきまーす!」
30人が食べる風景は圧巻。
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