プロローグ

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「んー、どっちのルートから攻略しようかなぁ」  画面の向こうから推しが上目遣いで誘ってくる。 『ねぇ、今度どこか遊びに行かない?』  ここがルートの分岐点。『A:それって二人だけでって事でいいのかな?』を選べば推しと両想いのトゥルーエンド、『B:じゃあ他にも何人か声かけてみるよ』を選べば友情エンド、『C:いいね! どこ行く?』を選べばハーレムエンド。  前作のパターンだとだいたいコレ。  そりゃ推しとのトゥルーエンドは理想だけど、男としてはハーレムは夢。男の浪漫。 「あー、迷うー!」 「うるっさいわねー、朝っぱらから」 「あ痛ぁっ!」  背中の痛みに振り向けば、母親が僕に足の裏を向けていた。つまり蹴られた。  可愛い息子を足蹴にすんな。 「ちょ! ノックくらいしてよ!」 「襖にノックしたら穴開くでしょーが、おバカ」 「じゃあ声かけ!」 「したわよ」 「あれ?」 「あれ? じゃない、バカ息子。ヘッドホンしてて聞こえる訳無いでしょーが」  あ。そうだった。ズレたヘッドホンを首にかける。 「だからって蹴る事は無いと思う」 「朝っぱらから近所迷惑なアンタが悪い」  すみません。そんなにデカかったのか。 「ところで直樹。アンタ、学校は?」  はい? 「母さん、世間じゃ学生は今、夏休み」 「その学生さんがこの前、「この日に学校行く」って言ってたのは母さんの空耳かしらねぇ?」  ・・・・・  そっとスマホに手を伸ばし、日付けと時刻を確認。 「……やっべぇええええ!」 「だ・か・ら。近所迷惑」  はい、すみません。だから蹴らないで、母上。
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