プロローグ

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「小牧ちゃんも参加だよね?」 「まぁね。生徒だけじゃ申請下りないから」  ハイタッチで喜ぶ賛成派とは逆に、反対派はがっくりと肩を落とした。  そんな訳で、何だかんだ言いつつもノリがいい小牧先生はきっちりと許可をもぎ取ってきた。んで強制参加が義務付けられた僕は学校に向かっている。  何で肝試しは夜なのに朝から行かなきゃなんないかなぁ。  小牧先生が悪ノリして「親睦を深める為にって名目だからね。林間学校とかボーイスカウトのキャンプとか集団行動で実証する必要があるでしょ? 家庭科室で調理する許可取った」なんて余計な事してくれたおかげで、悪ノリに便乗した目立つグループ、そのリーダー格の八重山が「じゃあ調理と肝試しの準備があるから早めに集まろうぜ」って言い出して、こうなったんだよね。  せめて昼からでいいじゃん。何で学校に10時集合なんだよ。夏休みだよ? ゆっくりゴロゴロ寝てたかったのにさ。新作ゲームも進めたかったのに。  でも、クラス全員強制参加って事は。ちらほらとクラスメイト達の姿が見えてくる。夏休みに制服姿は目立つからわかる。そんなの体育会系部員か赤点補習組くらいだから。例外は僕達のクラスの生徒って事で。 「おっはよー」 「うぃーっす」  部活でも補習でも無い、この時間帯に集まるのはクラスメイト達。 「やっぱ制服暑っついねー」 「皆が下校するまで着替えらんないとか地獄ー」 「ねー」  口々にそんな事をボヤきつつ教室に向かう。教室には既に半数近くのクラスメイトが集まっていた。 「おはよう」  ざわめく雑音の中でも、その声だけは聞き取れた。途端にドクンと心臓が高鳴る。 「おはよー、サクラー」  僕の横をすり抜けたクラスの女子が彼女に手を振りながら駆け寄る。  うん。わかってる。僕じゃない。そんな事ある訳が無い。  それでもその「おはよう」と向けられた笑顔が眩しくて。僕はこっそりと心の中で「おはよう」と返した。  馬鹿でも変態でもキモイでも甘んじて受ける。思春期の高校生男子なんてそんなモンだ。むしろ大っぴらに勘違いしないだけマシってもんだ。
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