プロローグ

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 彼女はクラスメイトの桜庭さん。仲の良い女子からはサクラって呼ばれてる。桜の花みたいなふんわりした美少女。  僕の一目惚れした女の子。  僕が今プレイしているゲームの推しキャラ『月詠 春花』がそのまま三次元実写化されたのかと思った。それくらい似ていて。  さすがに二次元と三次元を混同するほど堕ちちゃいない。ゲーム好きなのは認めるけど。オタクでもそこまでコアな廃人じゃないから。そこは認めないから。  見た目が似ているだけじゃなくて、中身もさ、似てるんだ。彼女が誰かの悪口を言ってるのを聞いた事が無い。  女子ってお喋り好きじゃん? んで何でかいつの間にか陰口大会になってたりするじゃん?  でも彼女は言わない。皆の話をにこにこ聞いて、陰口を聞くと哀しそうな顔になって。だから彼女が一緒の時は誰も陰口を言わなくなった。他の時は言ってるみたいだけどね。  そして彼女は誰にでも優しい。男子にも女子にも。イケメンにもブサメンにも。僕みたいな非モテのオタクにも。  ポーズとか猫被ってるんじゃなくて素で優しい。前に駅で道を聞かれた彼女を見た事がある。たぶん口頭説明じゃ不安だったんだろうね。アレコレと指差して、ルーズリーフに地図描いて、結局は自分が一緒について行ってた。  その時に道を聞いてたお婆さんは「ごめんねぇ、ありがとねぇ」ってにこにこしてて。「こちらこそ上手く説明出来なくてごめんなさい」って彼女もやっぱりにこにこしてて。  「あぁ、いいな」って。本当に好きだなって思ったんだ。  まぁ、自分の事はよくわかってるからね。告白なんて無謀な事はしない。結果はわかりきってる。  せめて推しキャラに『サクラ』って愛称をつけるくらいが関の山。  はい。キモくてごめんなさい。オタクの妄想って事で家の中だけなんで見逃してください。 ほら春花だし。春と言えば桜だし。ね?
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