明朝

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 支離滅裂と言わざるをえない会話が耳に届くのを、僕は部屋の隅で聞いている。  これはなんとなくの勘だが、もしかして僕はおそらくうっかりこの店に紛れ込んだというわけではないんじゃないだろうか。  例えば故意に連れてこられたのでは。そう思うと果たして家へ帰れるかさえ疑わしく思える。 「それで武器屋。おせっかいを言うわよ。その人間、元いたところへちゃんと帰してあげなさいよ。私と同じ時代の人間に見えるわ」  僕には男の顔がおや、という表情をしたように見えた。 「ねえ顔を見せたら」  女が言うので僕は照明の当たる部屋の中ほどへよたよたと歩む。同じ時代という言葉にはいささか引っかかるが。 「武器屋、これがなんなのかわかって連れてきたの」 「…人間の男だ」  男はふてくされたように答える。 「これはシャチクという種族よ。疲れやすくてあまり生命力がないわ。かといって攫って騒ぎにならないってわけでもない。厄介ごとの種よ。元に戻してらっしゃいよ」  女は長いウェーブのかかった茶髪で袖や裾のずるずると長い白黒の服を着ていた。見たところ日本人だ。社畜だって頑張って生きているのに種族扱いされあまつさえ生命力がないだの言われる筋合いはないと僕は思う。読者諸君そうだろう。     
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