明朝

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「お前…なにしてっ…」  僕がはくはくと喘ぎ言うと、男の顔は得意げに女を見ていた。諸君、こんなことが起こりえるだろうか。今や男の掌は僕の首輪と化していた。つまり男の掌の穴に僕の首ははまっていた。  これ以上に理解しがたい状況を僕は思い描けない。  飲み潰れることがこんな目に会うほど罪深いことだろうか。  女は深くため息をつき華奢で綺麗な手で自らの目を覆う。 「契約済なんて…あなたどういう意味かわかってるの」  プランシーという女、よく見ればなかなかの美女である。  その見ず知らずの美女が直接に侮蔑と哀れみの視線で僕を射抜く。 「契約って何ですか。僕はただ昨日の夜酔って外で寝てしまっただけで。気づいたらここにいて…」  あれ、と思う。唐突に記憶が蘇る。僕はこの男に会ったことがある。確かバーだ。いつだろう。昨晩だ 。  僕はこの男と握手をしたのも覚えている。何の握手だったか。どうして恐れもせずにこんな風貌のものと話していたんだろう。ああ、酔っていたのか。僕はしこたま酔っていた。     
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