2人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな時間まで外を徘徊する人間など僕同様ろくなものではない。だがここで僕は再び幸いを見出す。
男はありがたいことに僕をサッカーボールの一種というより生き物であると認識しているらしい。その蹴り方は容赦ないものでなく、とりあえず僕を起こそうとしているものと思われる力加減だ。いや、少々強めであることは否めないが。
「起きろ芋野郎。開店の時間だ。今日はプランシー様が来る。あのコラン・ド・プランシー様だぞ」
男は言う。ほう。それが誰だか知っていればへへえ、とへりくだるところだろう。しかし残念なことに薄識である僕には誰なのやら。
「だいたいファルコネットも出しっぱなしじゃねえか。店の奥へ移動させとけって言ったろう。いつまで床に伸びてる…俺がデグを置いたせいか…。待て、俺は悪くないぞ。いつまでもクッション材でいる阿呆がいるか。そんなの常識としておかしいよな、あ?どうなんだ」
意味不明だ。しかし一人でベラベラ言いながらつま先で僕を小突いてくるこの男は朝まで飲んでいた徘徊人ではなくどうやら何かの商売人であるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!