明朝

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 ファルコンだのデグだの何のことか皆目見当もつかないが、そう言った商品を取り扱う店の前、あるいは店内の床で僕は伸びているのだろう。  だが男は大きな勘違いをしているものと思われる。僕は頼みごとなどされた覚えがない。覚えがないというのはつまり、頼まれていない事実も頼まれた事実も覚えがない。  ようやく薄眼を開けることにする。天井が見えた、黒い天井だ。とても朝とは思えない色合いが目の前に広がる。まだ朝じゃないのか。  チューリップ型のランプが暗い部屋をぼんやりオレンジ色に染めていた。埃っぽい空気はカビの匂いだ。人気のない廃墟のような匂い。ちなみに僕は廃墟へは行ったことがないが、諸君はどうだろう。それによく見ると天井は黒でなくこげ茶だ。  あと腹の上に獣の二本足が乗っている。霞む目を瞬く。獣の足がついた丸い筒が僕を見下ろしている。いや奇怪なこともあるものだ。で、これはどういうことなのか。読者諸君、わかる者があれば教えてくれ。 「それでその、こんなところで眠りこけたのは謝りますが僕はどうしてここにいるんでしょうか」     
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