蜃気楼1

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ホテルのオーナである内藤だよと、森本の爺さんが口を挟んだのです、どうして知っているのかを聞くと、実は彼とは先の戦争中 神戸にて特攻兵器、回天の製造に携わっていたんだ、 戦争が終わり彼はそのまま技術担当の役員として残り、その後の造船ブームにのり頭角を現しあっと言う間に社長に登りつめ、 持ち前のバイタリテーで多角経営に乗り出し一大コンツエルンを築いたのだよ 嶌田はおそらく回天の搭乗員だつたのだろう、その繋がりで内藤と旧知のなかで、あれだけのコンッエルンを築いた内藤だから 危ない橋も渡っているはずで、何か内藤の弱みを知っていたのではないだろうか、だから簡単に融資をしたのではと話したのです 神戸の須磨警察署に震災時の銀行強盗事件の被害にあったのは神戸銀行と記録してあったので、この銀行の頭取を調べると何と 内藤である、この時点では内藤は頭取ではない、まだ合併する前であり彼が頭取をやつていたのは格下の地場銀行である 森本の爺さんが一時合併騒ぎで格下の内藤の銀行が各上の都市銀行を吸収し森本が頭取に就任したのだから、大蔵省を巻き込んだ 黒い影が取りざたされた事があり、嶌田はその裏側を知つていたのかもと話したのです、 しかしこれ以上暴けば華と自分の身の上に何か恐ろしい事が起こる予感がしたのですが、むざむざ追跡を諦める訳けにはいかない     
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