怪しい行動

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怪しい行動

休日、私は街へ繰り出す。 この辺りは私の行きつけで、知り合いも多い。 どこでランチをしようかと考えながら歩いていると、その先の店舗でショウウインドウを覗きながら腕組みしている課長の姿が見えた。 私は気付かれないようにそっと近づく。 「何してるんですか? 課長」 急に声を掛けられた課長は、驚きのあまりその場で飛び退いた。 「おっと……なんだ君か。驚かさないでくれよ」 私は課長の見ていたウインドウに目をやる。 そこがペットショップだと言うことは知っているが、何を物色していたのだろう。 「キャットタワー? 課長、猫を飼われるんですか?」 「いや、そうではないんだが、興味があってね。どれが遊び甲斐があって、寝心地もいいのかな、と」 「遊び甲斐? 寝心地?」 「え? も、勿論、猫ちゃん、い、いや飼い猫が使って良さそうなのはどれかなって事だ」 「はあ……でも課長、この前、自分のマンションはペットが飼えないから動画を観て紛らわしてるっておっしゃってましたよね?」 「え、そうだったかな? ……そうだ、その一環だよ。キャットタワーを観ながら脳内ペットの事を想像するんだ。これが意外と楽しいんだよ。ハハハ……」 私は溜め息が漏れるのを押さえることが出来なかった。 上司に向かってこう返す。 「個人の趣味、嗜好に口を出すつもりはありませんが、課長、他人の前でそう言う事はおっしゃらない方がいいと思います。まだ会社(うち)に来られて日も浅いですし」 「あ、ああ。全くその通りだ。面目ない」 「当然、私は黙っておきますが、課長も口約束だけではご心配でしょう。何かの見返りに私が口を閉ざすと言う事にしませんか?」 そう言われて、勘のいい課長は直ぐに理解した。 「わかったよ。お昼を奢らせて貰おう。実はまだ、この辺り事をよく知らなくてね。もし詳しいのなら教えてくれないか?」 「いいですよ。この辺りは私の庭、テリトリーですから!」 胸を張った私に部長は相好を崩すのだった。
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