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猫好き同士
その後も課長には何度か食事に誘って貰った。
私が課長の住んでいる地域に精通しているので、その話をする為だ。
また、そこそこ猫に関する知識もあり話が合うという理由もあった。
今夜も夕食に連れて行ってくれるという。
別に断る理由もないのでお供する事にした。
「実を言うと今日は俺の誕生日なんだよ。この歳になっても何となく特別な感じはあってなあ。一人じゃ侘しいと思っていたんだ。でも、君のおかげでボッチ飯にならなくて済んだ。どうもありがとう」
課長は少し恥ずかしそうにお礼を言った。
「おいくつになられたんですか?」
「いよいよ、四捨五入で五十路突入だ。あっ、四捨五入って分かるのかな?」
「バカにしないで下さい。切り上げ、切り捨てが出来ないと、仕事になりません。私を何だと思ってるんですか?」
「いやあ、君達の世代は円周率を3と教えられた世代だと聞いたから、もしやと思って」
「それって誤解なんですよ。学習指導要領が世間に間違って解釈されて、ゆとり世代を面白おかしく伝える例として広まったようなんです。私も、ちゃんと3.14て習っていますよ」
「そうなのか。こちらの方が勉強不足だったな。すまなかった」
あと少しで、50歳になろうと言うオジサンが、ペコリと頭を下げる。
そんな姿が素直で可愛いと思った。
「課長は猫好きだけど、犬みたいな性格なんですね」
それを聞いた課長は、
「い、犬?! うーん、余り嬉しくないなあ。俺は生れながらの猫派だから」
複雑な顔をした。
「私はどちらも好きですよ。微妙に猫派かな?」
「ええっ?! 微妙にか? あのさ、犬より猫の方がダンゼンいいよ。自由で気ままでしなやかでカッコいい!」
「なんですか、それ?」
スペイン料理のコースで最後にチョコラテとチュロスを頂いて、急遽の誕生日会はお開きとなった。
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