第一話 セイル・ランダ

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第一話 セイル・ランダ

ボクの目の前には高い山が(そび)え立っている。 さらにはこの山には道はないので、自由に歩けるんだけどその分地面の状態が不安定だ。 砂利や小石、時には大きな岩もある。 だからまっすぐには歩けない。 この山は大昔から神の坐山(おわすやま)として、人々に崇められ、そして(おそ)れられている。 山肌は薄くまたは濃い土色だけの世界。 でも、頂上近辺は白く色づいている。 万年雪というやつだ。 きっと、万年氷もあることだろう。 木や草もあるんだけど、それはごくわずかだ。 でも今日はすごくいい天気で、薄っすらと雲がかかっているだけだ。 ボクは右足でチカラ強く、神坐山の大地を踏みしめた。 今いる山裾(やますそ)はなだらかだけど、ここですでに標高1000マルリある。 酸素が少し薄いと感じる。 道はないけど、何とかしてこのまま真っ直ぐ走っていけば、すぐにでも山頂に到着できるように感じる。 だけど山のほぼ中央からは、勾配が異様に厳しくなるはずだ。 お師匠様の言いつけなので、破るわけにはいかない。 ボクはこの壁に近い山を自分自身の両腕両脚だけで越えなければならない。 『空を飛んだ方が楽なのに…』と、当然こんなことを考える。     
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