僕を殺したきみのため

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 修理を始めて、何日目のことだったろう。よく晴れた午後のことだった。 「おはようございます、私めのご主人様」  起動した人造人間は、人間と見た目の区別がほとんどつかないほど精巧だった。 「おはよう。そう、僕が君の主人だ。とりあえず、わたくしめ《・・・・・》はやめてくれ」  はい、私のご主人様。ご命令をどうぞ」 「そうだな、まず、服を着てくれ。人間そっくりの君が裸でいるのは、不自然というか、気まずい感じがする」 「着衣行為は、独力では不可能です」 「えっ、そうなの」 「私は、小動物――主にネズミや虫など――の駆除・捕殺用に作られました。プログラム以外のことはできません」  人造人間は、僕の目をまっすぐに見て答えた。ちゃんと瞬きをするし、口周りの人口筋肉も不自然ではなく動いている。 「そんなに人間っぽいのに」 「人間っぽいものは、つまり人間ではないから、人間っぽいのです」 「屁理屈は言えるんじゃないか」  僕はかつてこの家の住人が使っていたと思しき服を引っ張り出してきて、なんとか人造人間に着せた。あまり似合っているとは言いがたかったが、他にはないのだから仕方がない。 「それでもやっぱり、もう少し血色をよくしたいところだな。こころなし、顔全体が青っぽい。こっちへおいで」  人造人間を連れて、今まで家の中でも全く使っていなかった化粧台へ向かう。そこにある道具は使い方もよく分からなかったが、おおむねの見当をつけて、人造人間の頬や目元を明るい色で彩ってやった。全体的にオレンジ色がかかっていて、健康そうに見える。 「よし、これでより人間らしくなったぞ」 「これは化粧ですね。ご主人様は、十五歳を設定年齢としている私と同じような年恰好に見えます。ご主人様は化粧をなさらないのですか」 「いいんだよ、僕は。お茶は飲めるの?」 「アルコールを除いた飲料の摂取は可能です」 「それは理想的だ」  僕は、日なたのテーブルに人造人間を招いた。
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