僕を殺したきみのため

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「……ここへ来るまで、放浪していた頃にね。異様な物体をいくつも見た。認めたくはなかったが、どうやら、元人間(・・・)らしい、……死体を。カサカサに干からびて、よく見なければそうとは分からなかったけど」 「その死体とご主人様に、どんな関係が?」 「どうやら伝染病らしい。具体的な症状や感染状況は不明だが、僕は何らかの理由で、発症が遅れていたんだろう。つまり、遠からず僕は死ぬ」  僕の四肢の痛みや、生理現象に現れる異常は、人造人間を直している最中から現れていたが、この頃はそれがいっそう悪化している。  僕はため息をついた。  できることなら、人造人間との生活を続けたかった。  今までの日常を続ければ、いつまでも変わらず生きられるんじゃないかと夢想もした。  でも、体の変調は隠せない。僕はもう、畑仕事を続けられる状態ではなかった。 「人造人間は、畑は、耕せないんだよな」 「はい。できるのは、捕殺だけです」  次の日から、僕は、起き上がるのもおっくうになって、ほとんどベッドの中にいた。  人造人間は家事ができないので、必要最小限のことだけ僕が済ませ、すぐにまたベッドに戻る。  お茶の時間は、今までほど楽しくなくなっていた。  どうせ昨日と同じ、「最高の味」なのだ。どんなにおいしくでも、人造人間の評価も昨日と同じ。  つまらない。  いつしか、お茶の時間も寝ているようになった。  窓から見える畑は、目に見えて荒れていった。しかし、どうすることもできない。  日一日と、体は悪くなっていく。
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