七夕

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ピピピピ・・・電車の中で携帯が鳴った。 (あ、渉からだ)携帯の画面を器用に指でなぞった。渉は、失恋したころに知り合った言わる飲み友達だった。正直そんなにタイプじゃなかった。でも、渉のウソのない明るい性格と、どんな時も私を笑わしてくれるそんな優しい気持ちが好きになって、いつの間にか飲み友達から私たちは恋人になっていた。 《お疲れ。今どこ?》そっけない文章も彼らしい。 《今、○×駅通過した所だよ》 《一緒にご飯いかない?話したい事あるんだ。》 渉からごはんに誘ってくれることなんて滅多になくて、少しだけ胸騒ぎがした。 《じゃあ、○×駅待ち合わせでいい?あと10分くらいでつくから》私の心は不安でいっぱいだった。 待ち合わせの場所に、渉は壁にもたれかかって待っていた。「ごめん待たせて」私の言葉にくしゃくしゃの髪の毛を触りながら「今日も上司に怒られた?」「いつもだよ」そう返すと、渉は伊達メガネの目を細めて「星蘭怒られない日ってないよな」そう言いながらケラケラ笑いながら、さっと私の頭を撫でながら「よく頑張りました」そうくすくす言いながら私の事をほめてくれた。街中には浴衣を着たきらきらした女の子がいっぱいて、「七夕まつりいいなぁ」街中の音にかき消されそうな声で呟いた私に「そうだね」と渉の相づちに泣き出しそうな気持ちになりながらも、街中の明るさに少しだけ気持ちが楽になったような気がした。 「バイクで来たんだ、乗って?」そう優しくいう渉の手には私用のヘルメットをもってた。渉の腰に腕を伸ばして、背中に寄りかかりながら少しだけ昔渉に会えなかった時のことを思いだしていた。 「明日から転勤で2年くらい地方に行くことになった」あの頃の私はその言葉が別れの言葉に感じで涙が止まらなかった・・・今はこう近くに感じられるのに、不安な気持ちに押しつぶされそうになりながらギュッと腕をきつくまわした。
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